◎ 冬の山小屋での … 怪談 or 美談 ?

(作品No.番外)…いつもの ショートショート とは、一味違いますので

かなり標高がある 冬の雪山で、
4名の大学生登山パーティーが 立ち往生していた。

山の天気は変わりやすい。
異変を感じたベテランパーティーが、早々に登頂をあきらめ
下山する中、リーダーの市瀬が、
「もうじき雲の上に出るだろうから、きっと大丈夫さ。」
と軽く考えてしまったのが原因だ。

市瀬は今回が 冬山初挑戦だったが、
他の3人は登山自体がほとんど初めてだった。
そして、この 猛吹雪に襲われてしまったのだ。


「オォッ ・・ リィーダー 帰り道 雪に埋まってしまったネ。
ワタシたち ドウやって 帰るのォ?」
留学生のヨンが、歯をガチガチさせながら訪ねた。

「大丈夫さ! 川に沿って下ってゆけば麓には着くはずだよ。」
市瀬が皆を安心させようと、あからさまな作り笑顔を見せた。

「何言ってんのよぉ!
その川も、もう雪に埋まって 360度 真っ白じゃないの!
下手に動いたら、それこそ川にハマるわよっ!」
市瀬の彼女である三和子が、怒りをあらわにした。

「携帯の電波も届かないこんな所で、立ち止まっても、
凍えて死ぬのを待つだけじゃないか!」
 市瀬の口から 本音が零れると、
ヨンの妹、ニーナが、体を震わせながら泣き出した。
「イヤぁーッ まだ シニタクないーっ! 寒いーっ!」

「ニーナちゃん。 気持ちで負けちゃダメ! しっかりして。」
三和子がニーナの肩を抱こうと 振り返ると、
遠くに小さな山小屋らしき物が見えた。

「もしかしたら、これで、助かるかもしれない・・」
4人は、残る力を振り絞って、その小屋へと向かった。

近づくと、それは、丸太を四角形に組んだ、
よくある作りの ログハウスだった。

正面から見て、左側に着いているドアを開けると、
中は薄暗く、何か不思議な感じがした。

市瀬は、入口の近くにあるランプに火を灯しながら言った。
「オイルは、朝まで 何とか持ちそうだ。」
凍傷になりかけた手をかざしてみたが、すでに感覚はない。

「あっ!何か 本があるっ!」
ニーナは 入口から奥に見える本棚に向かって直進した。
文学少女の彼女には、本はどんな時でも救いなのだろう。

入口の対角、つまり市瀬から一番遠い所に陣取った三和子は、
そこにあるカップボードの中を念入りに探していた。
「器はあるけど、お湯を沸かす固形燃料は無いわ・・・残念。」

残る1つの角、つまり本棚の対角は、ダイニングキッチン。
そこを物色していた ヨンが、ついに、大きな声で叫んだ。
「おォッ! 乾パンが沢山あるッ! これでダイジョウブ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

灯りのある部屋で、お腹を満たすことの出来た4人が、
ウトウトと気を失ってしまいそうになった時だ。

入口近くのアンティークが、突然、カタカタと音をたてた。
・・ような気がした。それは 誰かの夢だっだのかもしれない。

背中が、体中が、ゾグゾグする。「寒い」というより「痛い」。
夜になって、さらに気温が下がって来た。
外に出たら、あっというまに凍死だが、
この小屋の中でじっとしていても、朝までには死ぬだろう。

「おいっ、みんな! 寝たら死ぬぞ!」
リーダーとしての威厳を示そうと、市瀬が大きな声で言った。
「体を動かさないと・・ そうだ! ゲームをしよう。」

全員のリュックが1カ所に集められた。
そして4人は、部屋の4つの角に散らばって座った。
「いいか! 俺は今から 全ての荷物を 入口から本棚まで運ぶ。
かなりの重量だ。イヤでも体は温まるだろう。
それが済んだら、本棚の前で俺は腰を下ろす。
替わりにニーナが立ち上がって、荷物を三和子の所に運ぶ。
次に、三和子がヨンに運び、ヨンが俺に運び・・を繰り返す。」

「なるほど! 荷物も人も、ぐるぐると部屋の中を回るのね。」
「ヒトが1周スル間に、荷物は4周! 反時計マワリ!」
「これなら、眠くなる事は無さそうネー。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このようにして、4人は極寒の夜を 乗り切った。
朝日が差し込む頃には、嵐もすっかり止み、視界も良好。
何とか、もと来た道を探し当て、
無事に4人は生還できました とさ。 めでたし、めでたし。

-------------------
この話は、これで終わりです。

えっ? タイトルの 怪談って何のこと?
と思ったあなた! 気付いていなかったんですね。

案外、不思議な出来事は、本人の知らないところで
起こっているのかもしれませんよ。

では、補足させていただきます。
-------------------

翌日、ヨンから 市瀬に電話が掛かって来た。
声の震えから、相当 動揺しているのがわかる。

「オォ・・リーダー! ひとり足りないよォ!?」
「えっ? 4人で出発、4人で帰着。 誰も置いてきてないぞ。」
「ブログにあのゲーム載せヨウと、図を描いて気づいたネ…。」
「図? じゃあ、紙と鉛筆を用意するよ。」

「マズ、四角形ABCDを書きマス。それ、小屋の見取り図ね」
「玄関にアンティーク(Antique)な置物、突き当たりに本棚(Bookshelf)、カップボード(Cupboard)、ダイニングキッチン(Dining Kitchen)・・なるほどね。」

「Aの角に一、Bの角には二、Cに三、Dに四と入れてミテ。」
「いちせ、にーな、三わこ、ヨン・・か、解りやすいな。」
「ここから ゲームスタートね。」
「最初に、一が荷物をBに移動。」
「次に、二がCにイドウ。」
「そして、三がDに移動・・って、何か問題あるのか?」
「オオありョ。四がAに荷物を運んでAに座る。その後は?」
「Aの処に居た、一が立ち上がって 荷物を受け取り
・・・あれっ? 一はBに居るぞ?」
「ホラ、5人居ないと成り立たない。」
「えっ!‥ オレたち以外に 誰も居なかったよな?」

ヨンの側にいたニーナが、受話器を奪って話し出した。
「エーン、こわいよー。アノ部屋 三角じゃなかったよネ。」
「ああ、四角だ。 間違いない。」
「じゃあ、もうヒトリ 誰がいたの・・?」
「俺たちが、顔を見ても驚かない 見慣れた誰か??」
「そんな人が、小屋で待ってるナンテ、ありえなーイっ
・・でも、帰って来れて ヨカッタ・・。」

市瀬は、そのあと すぐに三和子に電話した。
「おい、三和子。 あの山小屋での事だけど・・・・・・」

三和子は、一瞬「ハッ」 としたが、
その後は、静かにに深呼吸をするだけだった。

市瀬は続けた。
「なあ、あれって、冬の怪談ってやつかなぁ? 地縛霊とか?」
三和子は答えた。
「あなたって人は・・。 もう、ますます愛想が尽きたわ。
何かに助けてもらったっていう 感謝の気持ちはないの?
怪談…? もし、「談」を付けるんなら … 美談 …でしょ ?」


※ キャラクター、会話、人間関係、小屋の中の置物 等
  ほとんどが、「脚色」ですが、
  以下が、知人から「実話」として 聞いた お話です。

・4人が冬山で遭難しかけた
・四角形の山小屋で、上記のゲームをした。
・生還後「不思議」があった事に気付いた。
・4人とも全く同じ記憶を持っている。
・謎は解けていない。


関連記事
スポンサーサイト
-------------------
お読み頂き、ありがとうございます。
「にほんブログ村ランキング」に参加しています。
ポチッと 押して頂けると、うれしいです。
  ↓ 

  
     ↑
  こちらは、
  ついでで 結構です。

コメント

水島 郷 さま

遅ればせながら、第24回 自作小説トーナメント
優勝おめでとうございます。
なるほど!やっぱり怪談としては有名な話でしたか?
たぶん、そうだろうなーと 思っていました。

・目に見えない→不安→恐い→距離を置きたい 
という、理由でお墓参りに行かない。とか、
・お葬式に出る→穢れる→「清め」の塩を使う。
という風潮があったりしりますが、本来は両方とも、
亡くなった方々に「感謝の気持ちを伝える」行事だよね?
という事を言いたくて書いたのだと思います。

2017.01.29  11:57     梨木みん之助 さん   URL

怪談としては有名な話ですが、なるほど、美談として捉えたことは無かったです。着眼点、すごいですね!先入観を持たずに物事を捉えてらっしゃるのだなあ、と新鮮に驚きました。

2017.01.25  23:44     水島 郷 さん   URL

miss.key さん

コメントありがとうございました。
私が、語り手からこの話を聞いた時には、身震いしてしましたが、
ここでは、「なるべく恐くないように」を心がけて書きました。
その、成果があり過ぎでしょうか?
確かに、妖精でも、スタンド使い(ジョジョ系)でも、丸く収まってしまいそうな雰囲気がありますが、
本当は、もっともっとシリアスな話なんですよーっ。

2017.01.22  23:21     梨木みん之助 さん   URL

四角ではなく死角だったのでしょう

きっともう一人居たんですよ。でも正体がばれると拙いから夜が明ける前にさっさと消えたと。誰だって?個人的には雪女が良いな。でも実際はイエテイかなぁ。

2017.01.21  21:16     miss.key さん   URL

ポール・ブリッツ さま

火消茶碗さんと、miss.keyさんのところで、
よくお会いいたします、ポール・プリッツさま。
当ブログにもコメを頂き、誠に有難うございます。

さて、「~は、~のところへ」という表現は、
小説風にする為の、私の勝手な脚色であり、
元の話は、ゲームの詳細と「・5つ」のみです。

そして、私も語り手に同じ事を尋ねたのですが、
「当人たちの意識、記憶ははっきりしていた。」
と、否定されてしまいました。 そこで、
『三角じゃなかったよネ。』『四角だ』
という会話を入れた次第です。

しかし、「人伝えに聞いた話」を「思い出し」、
90%近い「脚色」をいれたお話ですので、
本当の事は、何とも言えないところです。



2017.01.21  21:00     梨木みん之助 さん   URL

No title

こんばんは。

合理的に考えれば、山小屋は非常に暗かったことが想像されます。また、判断力も低下してしまっていたでしょう。

そのため、彼らは「場所」を頼りに動くのではなく、「人の声」を頼りに動いていたと推定されます。彼らは四点を移動するのではなく、三点を移動していたのです。これは、セリフからも推測されます。「~は、~のところへ」という人物指定であり、「~へ」という場所の指定ではありません。

合理的に解釈するとこうなりますが、ミもフタもないので面白くない解釈かもしれません(^^;)

2017.01.19  22:46     ポール・ブリッツ さん   URL

コメントを書く

(設定しておくと後でPC版から編集できます)
非公開コメント